ゆくゆくは有へと

おかゆ/彼ノ∅有生 の雑記

意味役割

意味フレームに基づく概念分析の理論と実践

めいん

この pdf が結構好きで、ときどきぼちぼち読んでいます。

これの p.15 に、「意味フレームと意味役割の一般理論の基礎」というのがあって、そこには意味役割の下位分類として3つを挙げています:

  • 社会的役割
  • 状況的役割
  • 構造的役割

構造的役割は置いておいて、上の2つ、社会的役割と状況的役割ってのが結構大事だなって思ったんですよね。 これには背景があって、ロジバンって「いまそうなのか」「慣習的にそうなのか」「本質的にそうなのか」についてあんまはっきりしないんよね。たとえば、日本語だと「運転手」と「運転者」の意味合いの違いは社会性(一時性)にあると思うんです(って黒田さんも言ってる)。が、ロジバンだとその辺りのニュアンスの出し方に困るなって、時々思うことがあったんですな。他にも、

  • 彼は歌手です。
  • 彼が歌っています。

っていうの、どっちも「彼」は sanga1 な存在であるものの、sanga1 に関する一時性についての差別化をどうやって図ろうかな~って時々思っていました。

で、見つけたんですけど。まず、ロジバンで「役割」ってどうやって表現するんや?というところにぶち当たったんですな。 幸い、先ほどのpdfの 3.2.4 でいい感じの記述があったので引用しますね。

この場合,“枕” という語は実在物としての何らかの を指示しているわけではない.この語 (によって記号化されている概念) は何かを指示しているのではなく,ある性質を定義しているのであり,それが定義しているのは, ヒトが眠るときに頭の下に敷く何か という抽象的な性質,すなわち 〈ヒトの睡眠〉 という状況に固有の意味役割の一つである.

で、あ~なるほど。性質か~と。ってことは、ka抽象を使えばいいわけですね。ただ、「性質」っていうとある物に生まれつき備わった固有のありかた…みたいなのを想像してしまうのですよね。ka抽象がどのくらいのことを意味しているのかというのは分かりません。ただ最近はそんな格調高い(?)感じの用法はほとんどなくて、ほとんど役割くらいのニュアンスで使われています。実際、ka抽象はλ抽象であるというような、分かったような分からないような感じの風潮が結構主流で(まあ僕も賛成なんですが)、ともあれ、1次の開文で表せそうな抽象的存在を表してくれると捉えるのが都合も良いです。

で、そう考えると、なにか対象に対して、ka抽象を割り当てる述語、ありましたね。ckaji です。ckajiは汎用的な役割同定述語と捉えられそうですね。その役割の一時性については問わず、とりあえずその役割やで、ってことを言うときに使えるのが ckaji。

  • ko'a ckaji lo ka ce'u sanga

やっと本題。じゃあ社会的/状況的役割を同定するには?新しいの作るしかないかなと思ってたらありましたよ。

  • tcini :: x1 [state / property] is a situation / condition / state / position / are conditions / circumstances of x2.
  • tcaci :: x1 is a custom / habit / [ritual / rut] of x2 under conditions x3.

tcini の注釈には "Characteristics or environment of an object/event/process stage or state that are typically/potentially only temporary." ってあって、ほら!「temporary」って書いてある!

だので、「歌手」は lo se tcaci be lo ka sanga、「歌っている人」はlo se tcini be lo ka sanga と言い分けられそうですね。

とはいえまだ問題があって、tcaci は社会的/慣習的な役割で、歌手とか運転手とかって職業的役割っていうさらに下位分類的なものな感じしますよね。んーこれは lujvo 作るしかないかなーと思ったら、おお、流石に既にあったぞ i'e

  • jibykai :: x1 does their job / works (activity done regularly for pay).

「職業的役割」(ckaji を「役割」と訳すなら)で、まさに欲しかったやつだ!ってすれば、本当は

  • lo jibykai be lo ka sanga : 歌手

ッて感じになりますね。ちなみにですが、{se tcaci be lo ka} は ta'e で代用できそう。

  • lo ta'e sanga : 習慣的に歌っている人

「じゃあ、「職業的に」みたいな TAhE の語をつくればいいのでは?」って思ったんですが、アスペクトは事態全体にかかるものであって、x1 に対して何か意味づけてくれるものではないですからね。新しく語を作るなら、職業冠詞みたいなのかなあ。

まあでも解決してよかったよかった。ちなみに、その役割が生来的で本質的なもの(そうなると普通は役割じゃなくて属性っていうね)だってのを言いたいときは

  • jinzi :: x1 (property - ka) is an innate / inherent / intrinsic / natural property / quality / aspect of x2.

を使いましょう。これらを使いわければ、

  • 属性
  • 慣習的/社会的役割
  • 状況的役割

をちゃんと区別して表現できますね。

慣習的と社会的っておんなじか?

慣習的であることと、社会的であることってなんか違うくない?ってちょっと思ってしまった。

「コミュニティ内でこういう役割が与えられてる」ってことだろうので、cecmu とかつかって cemkai とかかね。

なお「社会」は kulce'u (文化的共同体)とか cemci'e (共同体システム)とかそういう語が作られていますな。

でも、tcaci 使うより cemkai 使うほうが確かになんかしっくり感はあるな…。lo cemkai be lo ka sanga か。

よだん1

ちなみに、mamta とか mensi とか、親族関係ってのも社会的役割に入りますね。

よだん2

同上pdfに「3.2.6 意味役割内在性の判定テスト」というのがあって、

「d が意味役割を定義する概念であるならば」

  • a が (b のために) c を d にする
  • a が (b のために) c を d の代わりにする

のどちらかを満たすような a, b, c, d の組が存在する。「d が (44b) のみを満足する場合,d は意味役割を定義するが,c はその適切な具現化ではない」だそうです。後者だけが成立するときは、c は適切な具現化じゃないらしい(まあ代用してるわけやからな)。

「本を枕にする」「本を枕の代わりにする」みたいなね。

これを踏まえると、いまの basti の定義ってちょっと歪かもしれない?

  • basti :: x1 replaces / substitutes for / instead of x2 in circumstance x3; x1 is a replacement / substitute.

basti は対象と対象の交換性についての述語ですね。って考えると、今は tarti のが相応しいかな:

  • tarti :: x1 behaves / conducts oneself as / in-manner x2 (event / property) under conditions x3.

これは、対象がある役割(性質)があるように振る舞うということで、これに -gau つければ「代わりにする」の意味になりそうです。

tragau lo cukta lo ka sipna kicne みたいな感じで。

よだん2

メンタルスペース理論気になる。値解釈と役割解釈ってやつ。実はロジバンの項も役割解釈したほうがいいようなやつある気がしなくもないんだよね。