読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ゆくゆくは有へと

おかゆ/オカ∃/大鹿有生/彼ノ∅有生 の雑記

カンマと連続母音について

lojban conlang

まず1つめ。カンマのCLLにおける使用例について。

The Shape Of Words To Come: Lojban Morphology - The Lojban Reference Grammar において、カンマの使用事例は、音節子音となる r, l にしか適用がない。

The Hills Are Alive With The Sounds Of Lojban - The Lojban Reference Grammar では、{mei,in} {me,iin} の形での使用例がある。「which contains the vowel “e” followed by the diphthong “ii”. In rough English representation, Example 5.1 is “May Een”, whereas Example 5.2 is “Meh Yeen”.」ともあるが、両方ともにおいてアクセントは e にくるし、glide の i は [j] であるので、{mei,in} と {me,iin} で音声上違いがないように思われる。後述するが、カンマを小休止/声門破裂音で読んではいけないので、そのことからも2つに違いがあるとは思えないし、ロジバンがこの2つを区別する必要も感じない。いずれにせよ、これは [mεjin] である。「カンマによって音節を強制的に me と iin に分けているので、例 5.2 の発音は例 5.1 の発音と異なる。」とあるが、原文にはこの2つが異なる発音であることはどこにも書かれていない。

 

2つめ。カンマはどう定義されたか。

まず、少し脱線するが、アポストロフィについては、 The Hills Are Alive With The Sounds Of Lojban - The Lojban Reference Grammar で、「The apostrophe is included in Lojban only to enable a smooth transition between vowels, while joining the vowels within a single word. In fact, one way to think of the apostrophe is as representing an unvoiced vowel glide.」とある。アポストロフィは「unvoiced vowel glide」として見れる。

同じページで、カンマは次のように説明されている (書体は私による) :

The comma is used to indicate a syllable break within a word, generally one that is not obvious to the reader. Such a comma is written to separate syllables, but indicates that there must be no pause between them, in contrast to the period. Between two vowels, a comma indicates that some type of glide may be necessary to avoid a pause that would split the two syllables into separate words. It is always legal to use the apostrophe (IPA [h]) sound in pronouncing a comma. However, a comma cannot be pronounced as a pause or glottal stop between the two letters separated by the comma, because that pronunciation would split the word into two words.

Otherwise, a comma is usually only used to clarify the presence of syllabic “l”, “m”, “n”, or “r” (discussed later). Commas are never required: no two Lojban words differ solely because of the presence or placement of a comma.

 「カンマは単語内の音節区切りを示すのに使われる」こと、「2つの母音の間では、コンマは、(そこで単語を区切ってしまう)小休止/ピリオドを避けるために何らかの glide(わたり音)が必要かもしれないということを示す」こと、それから、「カンマは本質的に不要である:カンマの有無によってロジバンの単語が変わるようなことはない」ことが特に書かれている。

また少し話が逸れるが、ピリオドは同ページで単語を区切ると説明されている。このことから、ロジバン/音韻論 - Wikibooks 「促音と長音」の項は処置として誤りである(ロジバンへの輸入としての処置は誤りであるが、促音と長音を文法的な都合を抜きにして、純粋に音として再現しようとするならどうすればいいか、という話であれば正しい。が、学習者は混乱するにちがいない)。

閑話休題、形態論の章、CLL 第4章:ロジバンの形態論 の「はじめに」ではいくつかの可能な音節のパターンについて列挙している。特に、

VV: 二重母音 ai ei oi au もしくはアポストロフィで分けられた母音の連続 [a, e, i, o, u] + ‘ + [a, e, i, o, u]

であり、この規則は cmene にも適用されるべきである。このことと、カンマが本質的に不要であるという先ほどの説明とを合わせると、カンマは cmeneにおける例えば {.sana,en.} の免罪符になりえない。この場合、上述の通り、何らかの glide が必要となる。というよりは、カンマはこの場合、glide(i, u, h, non-lojbanic sound)で読まなくてはならない。母音間のカンマは、汎用的なglide文字として扱われるべきである。

以下の文章は、The Hills Are Alive With The Sounds Of Lojban - The Lojban Reference Grammar からのものだが、これはCLL日本語抄訳においてはほとんど訳されていない。しかしながら、カンマの本質はここに書かれている。引用の後に訳を書いた。

The comma is used to indicate a syllable break within a word, generally one that is not obvious to the reader. Such a comma is written to separate syllables, but indicates that there must be no pause between them, in contrast to the period. Between two vowels, a comma indicates that some type of glide may be necessary to avoid a pause that would split the two syllables into separate words. It is always legal to use the apostrophe (IPA [h]) sound in pronouncing a comma. However, a comma cannot be pronounced as a pause or glottal stop between the two letters separated by the comma, because that pronunciation would split the word into two words.

Otherwise, a comma is usually only used to clarify the presence of syllabic “l”, “m”, “n”, or “r” (discussed later). Commas are never required: no two Lojban words differ solely because of the presence or placement of a comma.

Here is a somewhat artificial example of the difference in pronunciation between periods, commas and apostrophes. In the English song about Old MacDonald’s Farm, the vowel string which is written as “ee-i-ee-i-o” in English could be Lojbanized with periods as:

3.1)   .i.ai.i.ai.o
       [ʔi ʔaj ʔi ʔaj ʔo]
       Ee! Eye! Ee! Eye! Oh!

However, this would sound clipped, staccato, and unmusical compared to the English. Furthermore, although Example 3.1 is a string of meaningful Lojban words, as a sentence it makes very little sense. (Note the use of periods embedded within the written word.)

If commas were used instead of periods, we could represent the English string as a Lojbanized name, ending in a consonant:

3.2)   .i,ai,i,ai,on.
       [ʔi jaj ji jaj jonʔ]

The commas represent new syllable breaks, but prohibit the use of pauses or glottal stop. The pronunciation shown is just one possibility, but closely parallels the intended English pronunciation.

However, the use of commas in this way is risky to unambiguous interpretation, since the glides might be heard by some listeners as diphthongs, producing something like

3.3)   .i,iai,ii,iai,ion.

which is technically a different Lojban name. Since the intent with Lojbanized names is to allow them to be pronounced more like their native counterparts, the comma is allowed to represent vowel glides or some non-Lojbanic sound. Such an exception affects only spelling accuracy and the ability of a reader to replicate the desired pronunciation exactly; it will not affect the recognition of word boundaries.

Still, it is better if Lojbanized names are always distinct. Therefore, the apostrophe is preferred in regular Lojbanized names that are not attempting to simulate a non-Lojban pronunciation perfectly. (Perfection, in any event, is not really achievable, because some sounds simply lack reasonable Lojbanic counterparts.)

If apostrophes were used instead of commas in Example 3.2, it would appear as:

3.4)   .i'ai'i'ai'on.
       [ʔi hai hi hai honʔ]

which preserves the rhythm and length, if not the exact sounds, of the original English. 

 [訳; 以降の考察で用いるところを太字にしている]

カンマは、単語内の音節区切りを示すのに使われ、ふつうはその音節の区切り方が聞き手にとって明白ではないときに用いられる。カンマは音節を区切るが、ピリオドと対照的に、そこに小休止が絶対にないことを示す。2つの母音の間のカンマは、(そこで単語を区切ってしまう)小休止/ピリオドを避けるために、ある種のわたり音/つなぎ音が必要かもしれないということを示す。カンマを発音する際は、アポストロフィの音(IPA [h])を使えば安全である。一方で、ピリオドの音(小休止や声門閉鎖音)は単語を区切ってしまうため、カンマの発音に使ってはいけない。

もしくは、カンマは、大抵、音節子音な "l", "m", "n", "r" の存在を明確化するために使われるのみである。カンマは本質的に不要である:すなわち、カンマの有無によってロジバンの単語が変わるようなことはありえない。

ここで、ピリオド、カンマ、アポストロフィ間の発音における違いについて、幾ばくか人工的なものではあるが例を挙げる。(# 日本語訳では『ゆかいな牧場』として知られる)マクドナルドおじさん(# 日本語訳では「一郎さん」)の牧場についての英語の歌にある、"ee-i-ee-i-o" 「イーアイイーアイオー」という母音列はピリオドを使うと次のようにロジバン化できる:

3.1) .i.ai.i.ai.o

[ʔi ʔaj ʔi ʔaj ʔo]
イー、アイ、イー、アイ、オー!

しかしながら、これは元の発音に比べて、ぶつぎれだし、スタッカートだし、音楽的ではない。さらに、例 3.1 は有意味なロジバンの単語列({.i}、{.ai}、{.i}、{.ai}、{.o})ではあるが、文としてはかなり意味不明なものである。(筆記上の単語内にあるピリオドの用法に注意(# おそらく、「筆記上は1単語にみえるが、実際はピリオドによって複数の単語に分断されていることに注意せよ」ということ。))

代わりにカンマを使った場合を考えてみよう。最後を子音 "n" にして、ロジバン化された名前として元の文字列を表せそうである:

3.2) .i,ai,i,ai,on.

[ʔi jaj ji jaj jonʔ]

これらのカンマは新しい音節区切りを表すが、小休止/声門破裂音ではない。上記の発音は1つの可能性にすぎないが、目指している英語の発音とかなり近い。

しかし、このようにカンマを使うと、カンマの発音に用いたわたり音([j])が聞き手に二重母音のように捉えられる可能性があり、解釈が曖昧になりえてしまう:

3.3) .i,iai,ii,iai,ion.

これは技術的にはさっきと異なるロジバン名である。私たちはふつう、元となる名前とより近い発音になるようにロジバン名をこしらえようとするので、わたり母音や非ロジバン的な音をカンマで表せるようにするのは妥当である。このような例外は、綴りの正確さと、聞き手が(話者にとって)望ましい発音を確実に繰り返せるかどうかに影響を与えるだけであり、単語の境界の認識には影響を及ぼさない。

それでも、ロジバン名が常に明瞭であるなら、それはより良いことである。よって、非ロジバンな発音を完璧に真似ようとせず、アポストロフィを用いて規則的なロジバン名を作るのが好ましい(そもそも、完璧というのは、いくつかの音はロジバンにまともな代替音がないという単純な理由から、どんな状況であれ達成できない。)

アポストロフィを例 3.2 のカンマの代わりに使えば、次のようになる:

3.4) .i'ai'i'ai'on.

[ʔi hai hi hai honʔ]

これは、厳密には音の感じが異なりはするが、元のリズムも長さも保持している。

[訳おわり]

 

カンマは本質的に不要であるといいつつも、カンマを適宜 glide として読めと言っている。細かな辻褄の合わなさが混乱を招いていると思われる。

さしあたり、次のように捉えればよさそうである:

  • カンマは完全に任意である。
  • "l", "r", "m", "n" が音節子音であることを示すために、カンマを(前)後に置く。
  • ただし、特例として、V, V の形で、どちらも glide (i, u) でない場合、カンマは汎用的なglide (=i, u, h) として働く。このときカンマは必須であり、逆に、二重母音として認められない連続母音の間にはカンマが想定されるとみなすべきである(すなわち、隠れた汎用glideを読むべきである)。

 

ケーススタディ

まず、"glidable(i/u) V" は "C V" と同様に1つの音節を形成する。また、"glidable V V" は "C V V" と同様、VV が二重母音(ai/ei/oi/au)かアポストロフィで接続したものでなければならない。

  • "glidable(i/u) glide(i/u) V" の3母音連続表記は "glidable, glide V" の読みしかない。"glidable glide, V" は上記の通り不可であり、特例の適用対象になる。
  • "glidable VV(ai/ei/oi/au)" の3母音連続表記は "glidable VV" で1音節をなす。"glidable , VV" のカンマは汎用glideとなる。 
  • "aoi" は、"a,oi" の読みしかない。このカンマは特例カンマであり、すなわち、"aoi" には汎用glideが隠れている。
  • "iaiiaio" は汎用glide無しでは読めない。最もカンマが少ない読みは "iaii,aio" である [jaji@ajo] (@は汎用glide)。語頭の "i" をglide化したくないなら、"i,aii,aio" になる[i@aji@ajo]。
  • あやや」。"aiaia" と書くと、カンマを付したくなるが、"aiaia" は [ajaja] であるから、これだけできちんと「あやや」である。 

イーアイイーアイオーは、カンマの汎用glide用法がいかに拙いものかを表す好例だと思う。

 

PEGはあまり良くわからないけれど、

glide <- (i / u) &nucleus !glide 

 を

glide <- (i / u / comma?) &nucleus !glide

にしたらどうなりますか?

 

ともあれ、学習者は次のようにしてください: