ゆくゆくは有へと

おかゆ/彼ノ∅有生 の雑記

複数指示系の分配性とかのとどのつまり

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いんとろ

とりあえずまとまってきた(まとまってきたとは言ってない)

ひとまず複数指示系での述語意味論について2つまとめておきます

  • 分配性・集団性の話
  • nullの話

分配性・集団性の話

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とりあえず、整理した結果、まず集団性があって、それから累積性、そして最後に分配性という流れだろうということにしました。

今まで読んでいた述語の基本意味というのを、少しことばをかえて、意味基底ということにします。これは、

(1) I(F) = <a>と<aとb>と<aとc>

みたいな感じで定義されます。意味基底は、その述語がどの単称項で満たされるか(そもそも単称指示の項で満たされうるか)に加え、 その集団的な満たし方をする指示を基底します。大まかに言って、意味基底は集団性を規定するものです。

そして、述語記号は解釈されるときにもうひとつ累積拡張性が決定されます。累積拡張性があるとはその述語が累積的であるということを表します。

最終的に、累積拡張性のある述語は、意味基底を累積拡張することで拡張意味を獲得します。累積的な述語はこの拡張意味が真偽決定にさらされ、非累積的な述語は意味基底が真偽決定に使われます。この共通性のなさが好きでない場合は、累積性の有無によってその述語に与えられる(累積)拡張関数の質が異なる(非累積的な述語では恒等関数が渡される)と考えればいいと思います。

累積拡張性も、解釈によって与えられるものであるので、おそらくは解釈関数によって与えられねばなりません。そこで、述語記号に対する解釈は、意味基底と累積拡張性の2-tupleを返すとします。

(2) I(F) = <B(F), Cu(F)>

ここで、B(F) は述語記号Fの意味基底を、E(F) は述語記号Fの拡張意味を表します。Cu(F) は拡張関数で次の2つのいずれかを指します:

Cu(F) = δ or ι

δは累積的な述語に渡される累積拡張関数で、ιは恒等関数です。

たとえば、

(3) B(F) = <a>と<b>と<aとc>, Cu(F) = δ

のとき、拡張意味 Ex(F)は

(4) Ex(F) = Cu(F)(B(F)) = <a>と<b>と<aとc>と<aとb>と<aとbとc>

(5) B(G) = B(F), Cu(G) = ι

のとき、拡張意味 Ex(G) は

(6) Ex(G) = Cu(G)(B(G)) = ι(B(G)) = B(G) = <a>と<b>と<aとc>

分配性については、前回の通り、拡張意味と意味基底の関係で定まります。

さて、本質的に累積的基底において累積的とは次を満たすような B(F) をもつ述語のことをいいます:

(7) [∀x : x ⊂ B(F)] <β(x)> ⊂ B(F)

これは、集団的な満たしが偶然に(みかけの)累積性を担保していることを言います。たとえば、「xは1個以上」は本質的に累積的です。 この場合、累積拡張関数は恒等関数に等しくなるため、累積拡張性について不定であっても意味論が構成できます。

そして、次の分配条件が与えられます。

(8) 項 a が述語 F を分配的に満たす iff <a> ⊂ Ex(F) ∧ [∃x : x ⊂ B(F) ∧ μ(x)] (β(x) = a)

ここで、

(9) 項 a が述語 F をみかけ分配的に満たす iff <a> ⊂ B(F) ∧ [∃x : x ⊂ B(F) ∧ μ(x)] (β(x) = a)

(10) 項 a が述語 F を真に分配的に満たす iff 分配的に満たし、かつ、みかけ分配的に満たさない

で定義します。真に分配的であるとは、個々の対象で成立することを利用し、その推論によってその全体の対象の成立が帰結できることを意味します。一方、みかけ上分配的であるとは、基底において累積的であるときに起こりえます。

たとえば、「xは学生だ」というのは真に分配的ですが、「xは1個以上だ」というのは見かけ上分配的です。僕としてはこの2つの分配性は区別していいと思います。

null

こっちは簡単な話です。複数指示系の言語を使って外延的意味論を記述しようとすると、この困難にぶつかります。 というと、外延的意味論ではある個体領域を設定し、その個体領域の中で何がその述語を成立させるかを述語の意味にするわけですが、 その個体領域に全くその述語を成立させる対象たちがなかった場合、述語の意味はないことになります。 集合論を使う場合(単指示系の言語)は、∅を割り当てることでこれが表現できていましたが…。

というわけで、複数指示系の言語にも null、つまり個体領域の何者をも指示しないような記号というのを(メタ言語の方に)設けないといけない気がします。指示対象をもたない記号…。ううん。ちょっと怪しいですね。もしそのような記号がありなら、

(11) [∀x ⊂ D] null ⊂ x

(12) ¬[∃x ⊂ D] x ⊂ null

ということになります。まあ要は集合論の∅です。危険なかほりがする…?苦し紛れの1つの対策は、メタ言語ドメインDよりも広いところの領域 D' で定義されているとすることです。まあでもやはり苦し紛れですね。