ゆくゆくは有へと

おかゆ/彼ノ∅有生 の雑記

フィルタ回路の接続に関する注意

単純なRCローパスフィルタ、それを2つ繋げた複合フィルタ回路の話。

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out2 が単純なRCローパスフィルタ。念の為書いておくと、カットオフ周波数は


f_c = \frac{1}{2\pi R C}

である。計算実用上のことを考えると、R を kΩ単位、C を μF 単位として、


f_c \fallingdotseq \frac{160}{RC}

で覚えておくとよい。というわけで、out2 のカットオフ周波数は 1kHz。

周波数のゲイン特性を載せます:

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カットオフ周波数の1kHz以前では水平線、それ以降は -6dB/Oct の勾配でゲインが下がっていくのが分かります。

ちなみに、この水平線と、-6dB/Oct の直線の交点がちょうどカットオフ周波数になります*1。 実際はちょうどカットオフ周波数のところでカクッといきなり勾配が変わらず、滑らかに推移するゆえに鈍るので、 結果として、カットオフ周波数の点ではゲインは少し下がって -3dB になります。厳密には  20 \log{\frac{1}{\sqrt{2}}}

で。

この回路を単純に2つ繋げると、カットオフ周波数 1kHz で、勾配が2倍の -12 dB/Oct になりそうだと予想できる。それがout1である。

で、実際にシミュレーションしてみると、確かに勾配が -12dB/Oct になっており、単一での使用よりも急速にハイが落ちるようになっている。

ただし、カットオフ周波数まわりの鈍り方を見てみると、out1out2では少し様子が違う。

これは、ローパスフィルタ回路の入出力インピーダンスのせいだ。

一般に、インピーダンス  Z_1, Z_2で構成される分圧回路(out2回路もこれのひとつ)の入出力インピーダンスは、


Z_{input} = Z_1 + Z_2


Z_{output} = Z_1 // Z_2 =\frac{Z_1 Z_2}{Z_1 + Z_2}

となる。 // は並列和を表す。

理想的な入出力インピーダンス*2をもってなければ、入出力インピーダンス由来の分圧によって電圧のロスが生じる。

つまり、単に2つのローパスフィルタ回路の特性に加えてout3回路によって生じる分圧も勘案しなければならない。

ゲイン特性図のout3を見てみると、カットオフ周波数付近で少しゲインが下がっているのが分かる。これが「鈍り」の原因。

おわり。

・・・・といきたいんだが、本当に大事なのは「この入出力インピーダンスのゲイン特性への影響は手計算で概算できんのか?」という話である。これのために最近は苦戦している・・・・・・・・。

*1:Octはオクターブ。-6dB/Octは、周波数が2倍になるとゲインは-6dB変わるということ。

*2:入力インピーダンスなら∞、出力インピーダンスなら0が理想